「環境が壊れない」を保証する！Nixパッケージマネージャーで実現する完全再現可能な開発環境

「昨日まで動いていたのに...」の悪夢

ソフトウェア開発で最も厄介な問題の一つが、環境の再現性です。

• システムアップデートで依存関係が壊れる
• チームメンバー間で環境が微妙に異なる
• 本番環境と開発環境で挙動が変わる
• 数ヶ月前のバージョンに戻せない

Nixは、この全ての問題を根本から解決します。

Nixの革新的な哲学

Nixは単なるパッケージマネージャーではなく、関数型プログラミングの理念をシステム管理に適用した革新的なツールです。

コアコンセプト：純粋関数としてのビルド

Nixでは、全てのパッケージとその依存関係がハッシュ値で一意に識別されます。

/nix/store/abc123-python-3.11.0/bin/python
/nix/store/xyz789-python-3.10.0/bin/python

同じPython 3.11.0でも、依存関係が違えば別のパスに格納されます。 これにより、複数のバージョンが共存でき、依存関係の衝突が発生しません。

実践：Nixで開発環境を構築

インストール

# macOS/Linux
sh <(curl -L https://nixos.org/nix/install)

# macOS（Determinate Systems版、推奨）
curl --proto '=https' --tlsv1.2 -sSf -L https://install.determinate.systems/nix | sh -s -- install

プロジェクト環境の定義

shell.nixファイルでプロジェクトの開発環境を宣言的に定義します。

{ pkgs ? import <nixpkgs> {} }:

pkgs.mkShell {
  buildInputs = [
    pkgs.nodejs_20
    pkgs.postgresql_15
    pkgs.redis
  ];

  shellHook = ''
    echo "開発環境が準備できました！"
    echo "Node: $(node --version)"
    echo "PostgreSQL: $(postgres --version)"
  '';
}

# 環境に入る
nix-shell

# 自動的にNode.js 20、PostgreSQL 15、Redisが使える状態に
node --version  # v20.x.x

この環境は、システムグローバルを一切汚染しません。

Flakesで再現性を完璧に

Nix Flakesは、依存関係をロックファイル(flake.lock)で固定します。

# flake.nix
{
  description = "My awesome project";

  inputs = {
    nixpkgs.url = "github:NixOS/nixpkgs/nixos-23.11";
  };

  outputs = { self, nixpkgs }:
    let
      system = "x86_64-linux";
      pkgs = nixpkgs.legacyPackages.${system};
    in
    {
      devShells.${system}.default = pkgs.mkShell {
        packages = [
          pkgs.go_1_21
          pkgs.gopls
          pkgs.delve
        ];
      };
    };
}

# 環境に入る（flake.lockで完全に固定された状態）
nix develop

# 他のマシンでも全く同じ環境が再現される

Docker統合：究極の再現性

Nixを使ってDockerイメージをビルドすると、完全に再現可能なイメージが得られます。

# docker.nix
{ pkgs ? import <nixpkgs> {} }:

pkgs.dockerTools.buildImage {
  name = "my-app";
  tag = "latest";
  
  contents = [
    pkgs.bash
    pkgs.coreutils
    pkgs.nodejs_20
  ];
  
  config = {
    Cmd = [ "${pkgs.nodejs_20}/bin/node" "app.js" ];
    WorkingDir = "/app";
  };
}

# イメージのビルド
nix-build docker.nix
docker load < result

# 生成されるイメージは常に同じハッシュ値を持つ

CI/CDでの活用

GitHub Actionsでの例：

name: Build

on: [push]

jobs:
  build:
    runs-on: ubuntu-latest
    steps:
      - uses: actions/checkout@v4
      
      - uses: DeterminateSystems/nix-installer-action@main
      
      - uses: DeterminateSystems/magic-nix-cache-action@main
      
      - name: Build
        run: nix build
        
      - name: Test
        run: nix develop --command pytest

Nixのキャッシュ機構により、CI実行時間も大幅に短縮されます。

複数言語のプロジェクトも一つで管理

{ pkgs ? import <nixpkgs> {} }:

pkgs.mkShell {
  buildInputs = [
    # Python環境
    (pkgs.python311.withPackages (ps: [
      ps.django
      ps.pytest
    ]))
    
    # Rust環境
    pkgs.rustc
    pkgs.cargo
    
    # Node.js環境
    pkgs.nodejs_20
    pkgs.nodePackages.typescript
    
    # データベース
    pkgs.postgresql_15
  ];
}

全ての言語とツールが、バージョン固定された状態で共存します。

まとめ

Nixは学習コストが高いですが、その見返りは計り知れません：

• 環境が二度と壊れない
• チーム全員が完全に同じ環境
• 過去のバージョンに瞬時に戻せる
• システムをロールバック可能

「Works on my machine（僕の環境では動く）」という言い訳は、Nixで完全に不要になります。

究極の再現性を求めるなら、Nixに挑戦してみませんか？