はじめに
Bunは、JavaScript/TypeScriptの実行、バンドル、テスト、パッケージ管理を一つに統合した、パフォーマンスを最優先に設計された「オールインワンJavaScriptランタイム」です。その圧倒的な速さから登場以来注目を集めてきましたが、これまではmacOSとLinuxが主なターゲットでした。
しかし、Bun v1.1のリリースにより、その状況は一変しました。このバージョン最大の目玉は、なんといってもWindowsへのネイティブサポートです。これにより、Bunは単なる「速いツール」から、あらゆる環境で利用できる「本格的なプロダクション利用の選択肢」へと大きく進化しました。
この記事では、Bun v1.1で追加された画期的な新機能、特に「Windowsサポート」と「bun shell」に焦点を当て、既存のNode.jsプロジェクトからの具体的な移行戦略と簡単なベンチマーク比較までを徹底解説します。
最短で課題解決する一冊
この記事の内容と高い親和性が確認できたベストマッチです。早めにチェックしておきましょう。
Bun v1.1の三大新機能
Bun v1.1は多くの改善を含んでいますが、特に重要な3つの新機能を紹介します。
1. 待望のWindowsネイティブサポート
これまでWindowsユーザーがBunを利用するには、WSL (Windows Subsystem for Linux) を経由する必要があり、一手間かかる状況でした。Bun v1.1では、この制約が完全になくなり、Windows 10以降(x64)にネイティブでインストールして実行できるようになりました。
インストール方法 (Windows): PowerShellを開き、以下のコマンドを実行するだけです。
irm bun.sh/install.ps1 | iexこれにより、開発体験が大幅に向上し、Windows環境でもBunの持つポテンシャルを最大限に引き出すことが可能になります。
2. クロスプラットフォームシェル bun shell
package.jsonのscriptsセクションにシェルコマンドを書く際、OS間の互換性に悩まされた経験は誰にでもあるでしょう(例: rm -rfはWindowsでは動かない)。bun shellは、この問題を解決する新しいクロスプラットフォームシェルです。
bun shellは、rm, cp, mv, echo, catといった基本的なシェルコマンドをBun自身に組み込んでおり、OSの違いを吸収してくれます。これにより、cross-envやrimrafといった補助的なnpmパッケージへの依存をなくし、package.jsonのスクリプトをシンプルに保つことができます。
使用例 (package.json):
{
"scripts": {
"clean": "bun shell rm -rf dist",
"build": "bun run clean && tsc"
}
}このcleanスクリプトは、Windows、macOS、Linuxのいずれの環境でも、追加の依存関係なしにdistディレクトリを削除します。
3. さらなるパフォーマンスとNode.js互換性の向上
Bunは常にパフォーマンスを追求しており、v1.1でも例外ではありません。
- 高速化:
Date.now()のような基本的なAPIの呼び出しがさらに高速化されたほか、Windows上でのファイルシステム操作(fs.readdirなど)はNode.jsより58%も高速であると報告されています。 - 互換性向上:
node:httpやnode:vmといったNode.jsのコアモジュールとの互換性がさらに向上し、これまでBunでは動作しなかった多くのnpmパッケージが正しく動作するようになりました。
さらに理解を深める参考書
関連記事と相性の良い実践ガイドです。手元に置いて反復しながら進めてみてください。
Node.jsからBun v1.1への実践的移行戦略
既存のNode.jsプロジェクトをBunに移行するのは、多くの場合驚くほど簡単です。
Step 1: 依存関係のインストール
プロジェクトのルートディレクトリで、npm installの代わりにbun installを実行します。
bun installBunはpackage-lock.jsonやyarn.lockを解釈できるため、既存のロックファイルから非常に高速に依存関係をインストールします。完了すると、Bun独自のロックファイルbun.lockbが生成されます。
Step 2: スクリプトの実行
package.jsonに定義されているスクリプトをnpm runの代わりにbun runで実行してみましょう。
# 例: 開発サーバーを起動する
bun run dev多くのプロジェクトでは、これだけでアプリケーションが起動するはずです。
Step 3: コードの互換性対応
ほとんどのNode.jsコードはそのまま動作しますが、一部修正が必要な場合があります。最も一般的なのはパスの扱いです。
パスの扱い: Node.jsのCommonJSモジュールで使われる__dirnameや__filenameは、ESM(ECMAScript Modules)が標準のBunでは直接利用できません。代わりに、ESM標準のimport.meta.dirとimport.meta.fileを使用します。
// 修正前 (Node.js/CommonJS)
const path = require('path');
const filePath = path.join(__dirname, 'data.json');
// 修正後 (Bun/ESM)
import path from 'path';
const filePath = path.join(import.meta.dir, 'data.json');Step 4: Dockerfileの最適化
Bunを使うと、Dockerfileもよりシンプルで効率的になります。
Node.jsの一般的なDockerfile:
FROM node:20-slim
WORKDIR /app
COPY package*.json ./
RUN npm install
COPY . .
CMD ["npm", "run", "start"]Bun用に最適化したDockerfile:
# Bun公式の軽量イメージを使用
FROM oven/bun:1.1-slim
WORKDIR /app
# 依存関係のインストール
COPY package.json bun.lockb ./
RUN bun install --frozen-lockfile
# ソースコードのコピーと実行
COPY . .
CMD ["bun", "run", "start"]Bunのイメージは非常に軽量で、bun installも高速なため、ビルド時間と最終的なイメージサイズの両方を削減できます。
さらに理解を深める参考書
関連記事と相性の良い実践ガイドです。手元に置いて反復しながら進めてみてください。
ベンチマーク:Bun v1.1 vs Node.js
Bunの速さを体感するために、簡単なWebサーバーでパフォーマンスを比較してみましょう。
サーバーコード (server.js):
import { serve } from 'bun';
serve({
port: 3000,
fetch(req) {
return new Response("Hello, World!");
},
});
console.log("Server running at http://localhost:3000");(このコードはBun専用ですが、同様のExpressサーバーをNode.jsで用意して比較します)
ベンチマークの実行:
HTTPベンチマークツールoha(brew install ohaなどでインストール可能)を使って、各サーバーに負荷をかけます。
# 1. Bunサーバーを起動
# bun run server.js
# 2. 別のターミナルでベンチマークを実行
oha http://localhost:3000
# --- 同様にNode.jsサーバーでも実行して比較 ---環境にもよりますが、多くの場合、リクエスト/秒(RPS)でBunがNode.jsを数倍上回る結果が観測できるはずです。この圧倒的なパフォーマンスがBunの最大の魅力です。
さらに理解を深める参考書
関連記事と相性の良い実践ガイドです。手元に置いて反復しながら進めてみてください。
まとめ
Bun v1.1は、単なるパフォーマンスアップデートにとどまりません。Windowsネイティブサポートと**bun shell**という2つの強力な新機能により、開発体験と実用性を劇的に向上させ、BunをあらゆるJavaScriptプロジェクトにおける現実的な選択肢へと押し上げました。
Node.jsからの移行パスは明確で、多くの場合、わずかな修正で大きなパフォーマンス向上という恩恵を受けられます。まだBunを試したことがない方も、このv1.1を機に、ぜひその速さと便利さを体験してみてください。
さらに理解を深める参考書
関連記事と相性の良い実践ガイドです。手元に置いて反復しながら進めてみてください。



