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ベクトルデータベース完全ガイド【2025年版】:専用DB vs クラウド vs 既存DB、本当の勝者は?

Pinecone, MilvusからAWS, Google, Azureのクラウドサービス、pgvector, Elasticsearchまで。2025年のベクトルデータベース市場を完全網羅し、最適な選択を導く決定版ガイド。

時計のアイコン3 September, 2025
TH

Tasuke Hub管理人

東証プライム市場上場企業エンジニア

情報系修士卒業後、大手IT企業にてフルスタックエンジニアとして活躍。 Webアプリケーション開発からクラウドインフラ構築まで幅広い技術に精通し、 複数のプロジェクトでリードエンジニアを担当。 技術ブログやオープンソースへの貢献を通じて、日本のIT技術コミュニティに積極的に関わっている。

🎓情報系修士🏢東証プライム上場企業💻フルスタックエンジニア📝技術ブログ執筆者

はじめに

2025年、AIアプリケーション開発においてベクトルデータベースは、もはやニッチな技術ではなく、必須のコアコンポーネントとなりました。しかしその市場は、かつてないほどの速度で拡大・複雑化しています。選択肢はもはや「どの専用DBを選ぶか?」だけではありません。「主要クラウドのサービスを使うべきか?」「それとも、今あるデータベースの拡張機能で十分なのか?」という、より根源的な問いに開発者は直面しています。

この記事は、その混沌としたエコシステムを解き明かすための完全ガイドです。専用DB、クラウドサービス、既存DBの拡張機能という3つの大きな潮流を軸に、現在利用可能なほぼ全ての選択肢を網羅的に比較・分析。あなたのプロジェクトにとっての「本当の勝者」を見つけ出すための、信頼できる羅針盤を提供します。

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ベクトルデータベースの3つの潮流

爆発的に増えた選択肢も、その成り立ちや思想で分類すると、大きく3つの潮流に整理できます。

カテゴリ1: 専用ベクトルデータベース (The Specialists)

ベクトル検索のためだけにゼロから設計されたデータベース。最高のパフォーマンスと最先端の機能を提供することを使命としています。

  • 主なプレイヤー: Pinecone, Milvus, Weaviate, Qdrant, Chroma
  • 長所: ベクトル検索に特化しているため、パフォーマンス、スケーラビリティ、関連機能(フィルタリング、インデックスアルゴリズムなど)が非常にリッチです。
  • 短所: 新たに学習・運用すべき技術スタックが1つ増えることになります。

カテゴリ2: 主要クラウドのベクトルサービス (The Giants)

AWS, Google Cloud, Azureといった巨大クラウドベンダーが、自社のエコシステムの一部として提供するベクトル検索サービスです。

  • 主なプレイヤー: Amazon OpenSearch/Neptune, Google Vertex AI Vector Search, Azure AI Search
  • 長所: 既存のクラウド環境とのシームレスな連携(IAMでの権限管理、他のサービスとのデータ連携など)が最大の強み。インフラ管理の手間も軽減されます。
  • 短所: 特定のクラウドプラットフォームへのベンダーロックインのリスクが伴います。

カテゴリ3: 既存データベースのベクトル機能 (The Pragmatists)

開発者が使い慣れたリレーショナルデータベースやNoSQLデータベースが、拡張機能としてベクトル検索能力を獲得したものです。

  • 主なプレイヤー: PostgreSQL (pgvector), Elasticsearch, OpenSearch, Redis, MongoDB, ClickHouse
  • 長所: 運用コストと学習コストを劇的に削減できます。既存のデータとベクトルデータを同じ場所で管理できるため、アーキテクチャがシンプルになります。
  • 短所: 専用DBに比べると、ベクトル検索に特化した高度な機能やチューニングオプションは限定的です。

さらに理解を深める参考書

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詳細比較:プレイヤーたちの実力

専用DBの深掘り

  • Pinecone: マネージドサービスの先駆者。手軽さと安定した低レイテンシが魅力。
  • Milvus: スケーラビリティの王。10億件超のベクトルを扱うなら第一候補。
  • Weaviate: ハイブリッド検索の雄。キーワード検索とベクトル検索の組み合わせが得意。
  • Qdrant: Rust製の新星。高速なフィルタリングとメモリ効率に優れる。
  • Chroma: 入門者向け。LLMアプリ開発に特化し、シンプルなAPIが特徴。

クラウドサービスの比較

  • Amazon (AWS): OpenSearchを中心に、Neptune(グラフDB)、MemoryDB for Redisなど、ユースケースに応じた多彩な選択肢を提供。
  • Google Cloud (GCP): Vertex AI Vector Searchが強力。Googleの持つAI/ML技術との連携が強み。
  • Microsoft Azure: Azure AI Searchが中核。Cognitive Servicesとの連携で、インテリジェントな検索アプリを構築しやすい。

既存DB拡張機能の比較

  • pgvector (PostgreSQL): 今、最も注目される選択肢。pgvectorscale等の登場で性能が劇的に向上し、多くのユースケースで専用DBに匹敵する。
  • Elasticsearch/OpenSearch: 全文検索の巨人。ログ分析やテキスト検索の延長で、ベクトル検索もシームレスに扱えるのが強み。
  • Redis: In-Memoryデータベースの速度を活かし、超低レイテンシのベクトル検索を実現。リアルタイム性が求められる用途に。
  • MongoDB: ドキュメントDBの柔軟性を活かし、非構造データと一緒にベクトルを格納。複雑なデータ構造を持つアプリに最適。

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比較一覧表(マトリックス)

観点 専用DB (Pinecone, Milvus等) クラウドサービス (AWS, GCP等) 既存DB拡張 (pgvector, ES等)
パフォーマンス ★★★★★ (特化) ★★★★☆ (最適化) ★★★☆☆〜★★★★☆ (進化中)
エコシステム連携 ★★★☆☆ ★★★★★ (各クラウド内) ★★★★★ (各DBエコシステム)
運用コスト 中〜高
学習コスト
ハイブリッド検索 ★★★★☆ (Weaviate等) ★★★★☆ (OpenSearch等) ★★★★★ (ES, pgvector)
ベンダーロックイン 低 (OSSの場合)

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究極の選択ガイド:あなたのユースケースに最適なのは?

  • シナリオA: 「スタートアップで、とにかく早くRAGアプリを公開したい」

    • → 第1候補: pgvector (PostgreSQLに慣れているなら)。 第2候補: Pinecone (DB管理をしたくないなら)。
  • シナリオB: 「大企業で、既存のAWS/GCP/Azure環境と深く連携させたい」

    • → 各クラウドのネイティブサービス (Amazon OpenSearch, Vertex AI Vector Search, Azure AI Search)。ガバナンスやセキュリティ面で有利。
  • シナリオC: 「ECサイトで、商品名検索と画像検索を組み合わせたい」

    • Weaviate, Elasticsearch, OpenSearch。キーワードとベクトルのハイブリッド検索能力が鍵。
  • シナリオD: 「10億件以上の超大規模データで、最高のパフォーマンスを追求したい」

    • Milvus。スケーラビリティとチューニングの柔軟性で右に出るものはない。
  • シナリオE: 「リアルタイム性が最重要。ミリ秒単位のレコメンドがしたい」

    • Redis。インメモリの速度が求められる場面で最適。

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まとめ:2025年の最終結論

「最高のベクトルデータベース」は存在しません。しかし、**「最も合理的な出発点」**は明確に存在します。

2025年のベクトルデータベース選定における最終結論は、**「まず、既存の技術スタックを拡張することから始めよ」**です。

  • PostgreSQL を使っているなら、まず pgvector を試す。
  • Elasticsearch でログ分析をしているなら、そのベクトル検索機能を試す。
  • AWS のヘビーユーザーなら、Amazon OpenSearch を試す。
  • MongoDB が好きなら、Atlas Vector Search を試す。

このアプローチは、学習コストと運用コストを最小限に抑え、技術スタックの不必要な複雑化を防ぎます。そして、その上で性能や機能の限界が見えた時に初めて、MilvusWeaviateのような「専用データベース」への移行を検討する。これが、ほとんどのプロジェクトにとって、最もリスクが低く、最も成功確率の高い戦略と言えるでしょう。

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